鼓膜体温計の基礎的研究−四種類の精度-

鼓膜体温計は正しく体温を測定できるのでしょうか?
そこで基準となる温度を1000回測定して、比較検討してみました。
データ
鼓膜体温計の使い方で、測定距離を変えたり、測定角度を変えたりした
場合の読みの誤差、1132人を調べた調査結果は
それぞれ別のページに掲載しました
四種類の鼓膜体温計と、標準黒体
(左端)、下は左より水銀体温計と
電子体温計。
左側の鼓膜体温計から
クイックサーモ:QT、
サーモピット:TP、
サーモスキャン:TS、
右端がテイムテル:TR。
四種類の鼓膜体温計のX線写真。
左側の鼓膜体温計から
クイックサーモ:QT、
順にサーモスキャン:TS、
サーモピット:TP、
右端がテイムテル:TR。
鼓膜体温計にて温度測定
しているX線写真
表1.四種類の鼓膜体温計を用い、37℃に設定した標準黒体の測定結果。
有効データ数が測定した回数。以下の体温計の略字はQT:クイックサーモ、
TP:サーモピット、TS:サーモスキャン、TR:テイムテルを示す
37℃を測定したが、その平均温度の値に注意
鼓膜体温計 QT TP TS TR
有効データ数 1150 1120 1160 1120
平均温度 37.1342 36.1575 36.86 36.9806
37±0.1℃の度数 326 0 625 581
その割合(%) 28.4 0 53.9 51.9
37±0.2℃の度数 500 0 875 884
その割合(%) 43.4 0 75.4 78.9
標準偏差 s 0.392873 0.142231 0.191231 0.202596
標準誤差 SE 0.0115852 0.00424997 0.00561475 0.00605372
変動係数 CV 1.105798 0.393365 0.518805 0.547844
歪度 skewness -0.383572 0.472379 -0.626074 -0.364234
尖度 kurtosis 0.057832 0.975381 1.08157 -0.0812146
図1.上の表1をグラフにした。幅の広いグラフは測定結果に、
ばらつきが多いことを示し、狭いものは、ばらつきが
少ないことを示します。安定した測定ができない
ことを示す。TPはばらつきが少なく測定が可能であるが、
表示が1度近く低いので、較正が必要
四種類の鼓膜体温計を用い、40℃に設定した標準黒体の測定結果

40℃を測定したが、その平均温度の値に注意
鼓膜体温計 QT TP TS TR
有効データ数 1050 1030 1070 1030
平均温度 40.0788 38.9109 39.7436 39.9604
40±0.1℃の度数 351 0 287 379
その割合(%) 33.4 0 26.8 36.8
40±0.2℃の度数 510 4 536 630
その割合(%) 48.6 0.1 50.1 61.2
標準偏差 s 0.374619 0.20935 0.213027 0.278556
標準誤差 SE 0.011561 0.00652309 0.00651243 0.00867949
変動係数 CV 0.934708 0.538023 0.536003 0.6967081
歪度 skewness -0.23372 0.969283 -0.198141 -0.0245854
尖度 kurtosis -0.0575709 1.4979 0.998748 -0.0268934
図2.上の表2をグラフにした。図1と同じ結果。
37℃も40℃も同様の長所と短所を示す。


図3.連続10回測定した場合、最高温度表示が得られた
測定順序と、最低温度を示した測定順序。QT、TP、TSは
初回測定が低い表示となる。QTは4回目以降は高めの
温度表示となるが、1回目と2・3回目、それ以降では
表示温度が異なることが明らか(37℃の基準温度の測定)。


図4.連続10回測定した場合、最高温度表示が得られた測定順序と、
最低温度を示した測定順序。QT、TP、TSは初回測定が低い表示
となる。QTは4回目以降は高めの温度表示となるが、1回目と2・3回目、
それ以降では表示温度が異なることが明らか(40℃の場合)、
図3と同様の結果であった。


図5.連続10回測定により、得られた最高表示温度と
最低温度表示の差。幅が狭いと、ばらつきが少なく、
広いと、ばらつきが大きい。大きいと安定した測定が
できないことを示す(37℃の測定)。

図6.40℃の場合、連続10回測定により、得られた
最高表示温度と最低温度表示の差。幅が狭いと、
ばらつきが少なく、広いと、ばらつきが大きい。
大きいと安定した測定ができないことを示す。
図5と同じ結果であった。

医学雑誌「耳鼻咽喉科展望41巻615−621頁1998年、
西澤伸志著」を一部書き換えて掲載しました。
該当する医学雑誌はもよりの医学部の図書館に
備えらていますので詳細はそちらを参照して下さい。
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